こんにちは。Horyです。
今回の記事では熱力学の有名な冷却方法の1つであるジュールトムソンの実験に関して解説します。
この冷却方法は重工業メーカーが作る巨大な冷凍機にも使われている理論にもなりますので頑張りましょう。
ジュールトムソンの実験
ジュールトムソンの実験とは具体的には気体を細い管のようなモノを使って押し出す実験になります。
以下のような断熱壁で囲まれた容器を考えます。また、ピストンが2つあるとします。

上の図のように右側と左側で圧力にわずかに差をつけて(図なら右側が高い)気体を移動させるという方式を使います。
断熱壁で囲まれていて、最初は右側の空間は0なので系全体の変化は断熱過程であり、密閉空間での実験なので粒子数は変わりません。
断熱変化なので、内部エネルギー変化は右側と左側のピストンに与えた仕事と同じ値になります。

- 上の式の意味
- 変化前後でのエンタルピー(H=U+PV)が等しい
- 内部エネルギーが全て体積変化のある仕事に利用された
ここで、圧力と温度の変化比のことをジュールトムソン係数(a)と呼びます。

ジュールトムソン係数(JT係数)が0より大きいかどうかが非常に重要で・・・
- JT係数>0・・・温度は減少
- JT係数<0・・・温度は増加
ここで、膨張係数や定圧熱容量を以下のように定義します。

ここで、エンタルピーを定義してマクスウェルの関係式も使います。エンタルピーに関するマクスウェルの関係式はこちらの記事です。

これらを利用してJT係数を圧膨張係数と定積熱容量を用いて表してみると・・・

理想気体と実在気体のJT係数
先ほどの式でジュールトムソン係数を以下のように求めました。

実在気体では状態方程式からJT係数が0になりませんので、上に紹介したJT過程は実在気体を冷却して液化するのに利用される冷凍機構になります。